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2020年1月9日木曜日

Match Report: 2020/01/02 Norwich vs Crystal Palace

 1月11日のクリスタルパレス戦に向けて、今回はノリッジ対クリスタルパレスのレビュー記事です。結果は1-1の引き分け。両チームのメンバーは以下の通り。


 試合開始前の順位はノリッジが20位でクリスタルパレスが9位となっている。ノリッジはアーセナル戦以降7試合勝利できておらず、最下位に沈んでいる。40失点はリーグ最多である。一方のクリスタルパレスはリバプール、レスターに次ぐ失点の少なさで堅守を武器にしており、守備面だけで言えば対照的なチームの対戦となる。

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主なスタッツ


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クリスタルパレスの守備


 ノリッジの先制点が生まれたのは試合開始直後の前半3分。AaronsがPukkiへ浮き球を供給、こぼれたボールをノリッジが拾って右に展開し、ゴール前まで運んで行った。ディフェンスラインからPukkiやMcLeanにボールを当ててそのこぼれ球を中央に密集させている前線の選手が回収するという攻撃はエバートン戦でもみられたノリッジの典型的なパターンである。


 こうした攻撃は前半7分にもみられた。ここではCBのHanleyからMcLeanへボールが供給されている。クリスタルパレスの非保持時の形は下の様な451になり、2枚のブロックを敷くような形になる。ワントップのAyewは主に相手DMFへのパスコースを遮り、Milivojevicはアンカーの様な位置に立ち、左右のカバー役を引き受ける


 ただ、上の様な形では見ての通り、ノリッジのCBやDMFが自由にボールを持つ機会が多くなってしまう。ノリッジのCBの2人は正確なフィードを供給することができるのでここをあまり自由にはさせたくない。そこで、こうした形と並行してクリスタルパレスが使っていたのが下の様な433の形で(前半19分の場面)、前線の3人は相手CBへも積極的にプレスをかける。Zaha、Meyerのサイドの2人はSBへのコースを切りながらプレスをかけようになっていて、中盤の3人は中央を締めつつ、前線の3人の動きに連動できるようになっている。


 上の様な2つの形を使い分けていたが、どういったことが切り替えのトリガーになっていたのかはわからなかった。クリスタルパレスの守備時の弱点が顕著にでていたのが前半8分の場面である。まずは先ほど指摘したように、CBやDMFの選手へのプレスが不十分で、余裕のある状態でボールを扱うことを許してしまっている。また、この場面ではブロックを敷いているが、ブロック間で中央に密集するノリッジの前線の選手への役割が明確ではないので、このブロック間のスペースやMilivojevicの脇を使われる場面が多くなってしまう。この場面では、BuendiaがMilivojevicの脇で受け、スペースに走るPukkiへボールを供給しており、あわやPKかというピンチを招いている(Buendiaのボールがわずかにオフサイドであったので事なきを得ている)。こうしたMilivojevicの脇を使われる場面は39分にもみられたし、また、これに加えて目立ったのがZahaの守備対応が間に合っていない場面が何度か見られたことである。これは後半のプレーになるが、72分のプレーがこの典型的なものだろう。マンチェスター・シティ戦などと比べると、Zahaの守備意識が希薄になっている印象を受けたが気のせいかもしれない。そういったことよりもおそらく、チーム全体の攻撃がZahaへ依存しており、Zahaのタスクが多すぎるのだと思う。


クリスタルパレスの攻撃


 クリスタルパレスの攻撃の要は何と言ってもZahaである。彼にどれだけいい形でボールを供給できるか、ということが最重要となっており、下のヒートマップを見てわかる通り、Zahaのいる左サイドでボールを持つことが圧倒的に多く、攻撃時のサイドの偏りを見ても左サイドが58%、右サイドが23%、中央が19%となっている(whoscored.com)。12分や21分のプレーの様に、CBやSBから逆サイドのZahaにサイドチェンジをするという場面を見られた。

whoscored.com

 クリスタルパレスのボール保持時の両チームの形は下の通り。ノリッジは4231の形になり、McLeanはMilivojevicへ、DMFはCMFへ、SBはSHへほぼマンマークになる。クリスタルパレスの両SBがボールを持つとSHの選手がプレス、CFのPukkiはCBへプレスをかける。ただマンマークにこだわりすぎてZahaとAaronsの一対一を作り出されるとやはり危険で(Aaronsの守備対応に不安があるということではなく、Zahaという選手がそれだけ突出した才能を持っているという意味で)、Zahaがボールを持つと積極的にBeundiaがフォローへ回るようになっていた。この日、地上のデュエル数がもっとも多い選手はBuendia、それに次いでZahaとなっており(sofascore.com)、この2人が圧倒的に多い。Zahaにあまり仕事をさせなかったのはBuendiaの貢献が大きい。ただ、後半の同点ゴールは、ゴール前の混戦からAaronsとZahaの一対一をつくられ、そこからAaronsが交わされシュート性のクロスを上げられたことから生まれてしまっている。



 対策を固めたノリッジに終始苦戦していたクリスタルパレスであったが、いくつかチャンスも作っていた。例えば下の43分の様な場面。ここで特徴的なのはZahaが大外で少し下がってきた位置にいることと、SBのRiedewaldが中寄りにポジションをとっていることである。Riedewaldがこうしたポジションをとる場面は試合の中で何度か見られ、これはBuendiaを引きつけつつ、できるだけノリッジの選手がいない位置でZahaにボールを受けさせようという工夫だと思う。SakhoからZahaにボールが渡り、Buendiaは遅れてZahaに対応。この時、ZahaにはCBとSBの間に走るMcArthurを使うか、中央のRiedewaldにパスを渡すか、という選択肢があり、ここでZahaはRiedewaldを選択した。ここでは選ばれなかったが、McArthurがこのスペースに飛び出す動きはシーズン序盤からみられるもので、この試合でも他には54分などにもみられた。


 他には下の37分の場面の様なものもある。ここでは中央寄りの位置でボールを受けに下りてきたZahaへパスが渡り、Milivojevicへ落としてからサイドのスペースへRiedewaldが飛び込んでいる。上の43分の場面もそうだが、これは最も危険な人物であるZahaをおとりにしたプレーになっていて、Zahaに対してBuendiaとAaronsの2人が対応する体制の裏を突くことができている。ただ、裏を突いたと言っても、クリスタルパレスとしてはやはりZahaにゴール近くでボールを渡したいというのが本音であり、渋々こういった攻撃を選ばされたともいえるだろう。


 また、McLeanがMivojevicを監視しており、ビルドアップの要でサイドにボールを散らすことのできるMilivojevicが仕事をさせてもらえないことが多かった。そこで特に後半からは、80分のプレーなどにみられるように、Milivojevicがサイドに流れて相手のマークを引き連れつつ中盤にスペースを空けることで、そのスペースをMcArthurやMcCarthyが使うという工夫も見られた。McArthurは上で書いたように飛び出す役割を担うことが多いので、下りてくるのはMcCarthyが多いように見えた。後半途中からは343の様な形(Hodgsonの試合後のコメントでは424と言っている)にして攻勢に出たが1点を奪うのがやっと。対するノリッジも72分にポスト直撃のチャンスを作り出したが、追加点は奪えず、85分に同点に追いつかれてから再度ギアを上げたが残された時間はわずかで、1-1の引き分けとなった。

試合後雑感


 この試合で注目すべき話題というと、クリスタルパレスの同点ゴールについてであろう。最初はオフサイドの判定でノーゴールであったが、それがVARで覆されてゴールになった。プレミアリーグではVARの有効性やあり方について議論がなされている状況で、ファンの中でも賛成と反対、様々な意見が入り混じっている。今回のこの判定も、こういった議論に一石を投じるものとなるだろう。ゴール直後の興奮やパフォーマンスがなくなってしまうという懸念もあるようだが、この試合をみる限り、VARによりゴールであると判定された場合にはそれはそれで、ビデオ判定中の独特な緊張感とそこからの喜び、という新たな文化が生まれつつあると感じた。それがフットボールに求められているものなのかはわからないが・・・


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