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2020年1月26日日曜日

Match Report: 2020/01/19 Newcastle United vs Chelsea

 今回はニューカッスル対チェルシーのレビュー記事です。結果は1-0でニューカッスルの勝利。両チームのメンバーは下の通り。


 今節開始時点の順位はニューカッスルが13位、チェルシーが4位。ニューカッスルは4戦勝利無しと苦しんでいる。両チームの対戦はプレミアリーグが始まってからちょうど節目の50試合目の対戦になる。通算成績はチェルシーが25勝12分12負となっていたが(chelseafc.com)、この試合では終了間際の得点でニューカッスルが勝利。不調と相性の悪さを覆す勝利と2020年初勝利を見事ホームの観客に届けることができた。

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主なスタッツ


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チェルシーの攻撃


 ボール保持率等のデータを見てもわかるように、この日は基本的にチェルシーが攻めて、ニューカッスルがカウンターでの得点の機会を伺うという展開。ニューカッスルのカウンター時の狙いは後述するとして、チェルシーがまずはこの日の一番のポイントであった、ニューカッスルの強固な5バックをチェルシーがどう攻略しようとしたのか、というところに注目したい。チェルシーの攻撃時の両チームの形は下の通り。ニューカッスルは4枚と5枚のブロックで待ち構え、CFのJoelintonはJorginhoへのパスコースを切る位置に立ち、チェルシーのSBがボールを持つとSHがプレッシングに行くという形。4枚のブロックはコンパクトに中央を締めるので、チェルシーのSBへのプレスは少し遅れての対応になってしまうが、それはある程度許容し、しっかりと中央からの崩しをケアする。基本的には、12月辺りにチェルシーと対戦し勝利をあげたチームのやり方を踏襲している。


 ただ、チェルシーもこれまでと同じやり方を繰り返していたわけではない。チェルシーの工夫がみえたのは下の図の50分の場面。SBとSHの選手の内外関係に主に工夫を加えていて、SBが外、WGが内という関係性が以前は主だったが、今回はSBが内、WGが外という関係性の場面が何度も見られた。これにより、相手SBを外に釣り出し、空いたSBとCBの間のスペースをCMFが飛び出して利用しようというのが主な狙いになる。これを防ごうとチェルシーのWGへのマークが甘くなると、WGの選手がカットインしてシュート、という選択肢が生まれる。今年になってWillianを左で使うようになったのもそのためであろう。外でSBの選手がボールを持つよりもWGの選手が持つ方が脅威は格段に増すし、クロスを上げてもAbarahamしか合わせる選手がいないという欠点も補える。こうしたことを実現するためにはCMFの選手に最前線に飛び出す様な機動力が求められることになる。ビルドアップに貢献したり後方からの推進力やミドルシュートに定評のあるKovaciciよりも、KanteやMountの方が相手のSBとCBの間で受けて役割を持てるので、最近はKovacicが試合に出られていないのではないかと思う。特にKanteはこの試合でも左右のスペースに飛び出しを狙い攻撃を活性化させていた


 また、WGの選手を外に出し、SBの選手が中央寄りの位置に立つことで、SBの選手はビルドアップに参加したり、CMFとともに相手のSBとCBの間への飛び出しを狙ったりする。上の場面ではJamesがビルドアップを助けて右への展開に貢献していた。ただ、ニューカッスルは5バックで元よりディフェンスラインに割いている人数が多いので、SBとCBの間にスペースを空けてもそれだけでは崩し切るのは難しい。それに成功していたのは下の41分の場面である。この場面の様に、ニューカッスルのSBの選手を外にピン留しつつ、ビルドアップに参加したSBのJamesにSaint-MaximinとHaydenが釣られることで(Saint-Maximinの対応の遅れ)、Kanteを左CBの選手がみなければいけない状況を作り出し、左CBの選手が釣り出されてできたSBとCBの間のスペースにKanteが飛び込んでいる


 上の様な工夫以外にも、片方のサイドに選手を集中させたり(32分など)、SBの選手を最前線にあげることで(78分)ニューカッスルの中盤を無効化しようと試みる様なものや、中盤でAzpilicuetaが受けてそのままミドルシュートに持ち込む形(51分など)、Jorginhoが持ち上がる(71分)等、SBのオーバーラップからクロスをあげる一辺倒であった印象のある以前と比較して有効な策は講じていた様に見える。ただ、ShelveyとHaydenの中盤の2人(途中からはS. LongstaffとM. Longstaff)はCBとSBの間が空かないように、なおかつバイタルエリアのケアもできるように適切なポジションを維持し、上の画像の41分の場面の様にCBが釣り出されるような局面はほとんど作れなかった。


 また、チェルシー側の攻撃について付言すると、左右で少し形は違っていて、Hudson-Odoiは外に張る場面がほとんどであるが、逆サイドのWGのWillianは外や中央の低い位置に下りつつ、パスの出し手としても機能し、上の32分の場面の様にチャンスを作り出していた。CMFについて言うとKanteは裏のスペースへ飛び出す、という表現通りであるが、Mountは相手のDFの間で受ける、というイメージで、そこから別の第三者の飛び出しを生かしてそこにパスを供給する役割を担っている様に見えた。

ニューカッスルの攻撃


 基本的にボールを保持していたのがチェルシーだったのでニューカッスルの攻撃の場面は多くなく、シュートも7本、うち枠内シュートは2本のみであったが、ニューカッスルの攻撃の狙いが出ていたのが下の87分の場面。ニューカッスルの選手はボールを持つとまずはCFのJoelintonにボールを預けられるかということを確認しているようにみえた。攻撃時のニューカッスルは3421の様な形になっていてシャドー的な役回りのSaint-MaximinとAlmironはJoelintonの近くにいることが多く、サイドに流れるJoelintonがボールを保持できると、Saint-MaximinとAlmironがサポートに回る。ここで数的優位をつくれたり、ドリブラーのSaint-Maximinがいい体勢でボールを持てるとそのまま3人を中心としたコンビネーションで崩すことも選択肢には入っているのだろうが、そういった場面では基本的に相手の守備陣も密集していることがほとんどであるので、そういった突破は許してもらえない。そこで、DMFの選手に預け、その選手が逆サイドへ展開しWBの選手を生かすような攻撃を仕掛ける。こういった形が基本的な狙いではないかと思う。チェルシーは片方のサイドに選手を集めてハイプレスを仕掛けてくるので、手薄な逆サイドを生かしていく様な形はチェルシーの弱点を突く意味でも有効だろう。ちなみに、試合終了間際の決勝点も、左に流れたJoelintonが奪ったコーナーキックから生まれたものである。


 他には、比較的余裕をもってサイドでボールを持つことができる場面では、WBの選手とSHの選手の2人で崩していく様な形もあるようである。ただそういった形は、一対一で絶対的な強さを誇るSaint-Maximinがいないと成立はしなさそうで、逆にAlmironのいる右サイドでつくるのは難しいのではないかと思う。この日も55%がSaint-Maximinのいる左サイドからの攻撃で、パターンが多い分、左サイドからの攻撃の方が多くなるのではないかと思う。

whoscored.com

 下の52分の場面は、SHのAlmiron(ここではSaint-Maximinとサイドが逆になっている)とWBのRitchieでサイドを崩そうとRitchieがオーバーラップしたが上手く生かすことができず、Shelveyまでボールを下げた局面である。勢いよくオーバーラップするWBにも注目だが、ここで注目すべきは左CBの位置で、WBが出ていった後を埋めるように積極的に攻めあがっている。この場面ではClarkからRitchieへのパスが通らずここで攻撃が止まってしまうのであるが、CB、WB、SHの3人で崩していく様なサイドでの崩しのパターン(シェフィールド・ユナイテッドの様にCBがWBを追い越すようなことはみられないかもしれないけれど)もみられるのかもしれない。


試合後雑感


What the papers have said about Chelsea's loss at Newcastle

 この日もボールを圧倒的に保持しながら崩しきれずに負けてしまったチェルシー。各紙の感想まとめは上のリンクから。Jorginhoのパス114本の内、ニューカッスルのペナルティエリア内へのパスはわずか7本という数字に代表されるように創造性に欠く攻撃陣への批判も見られるものの(football.london)、それよりも過熱気味なのがKepaへの批判。この日も枠内シュートわずか2本で1点を決められている。この次の試合のアーセナル戦では枠内シュート2本で2ゴール(sofascore.com)。セーブ率55.4%はプレミアリーグで最下位、欧州7つのリーグの132チーム中127番目の数値となっている(tribuna.com)。セーブ率に関しては少し前に詳しいデーターをまとめているツイートをこのブログでも紹介している。このことについてはSky Sportsの記事でも様々なデータが紹介されていて、これによると、期待される失点数と比べた場合、Kepaは今シーズン、約8点も多く失点していることになる。今シーズンだけの不調ではなく、これは加入してからずっとそうであるようだ。8失点今より少なければ、12月の敗戦の内いくつかは引き分けに持ち込めていたかもしれない。原因は分からないが、優勝を目指すのであればいずれはここにテコ入れが必要になるだろう。

skysports.com