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2019年12月9日月曜日

Match Preview: 2019/12/10 Arsenal vs West Ham United (A)

 12月10日のウェストハム・ユナイテッド(以下、ウェストハムと表記)戦に向けたプレビュー記事です。ウェストハムの試合のレポート記事も書いていますので併せてそちらもご覧ください。
Match Report: 2019/12/01 Chelsea vs West Ham United

ウェストハムの現在の状況


whufc.com

リーグ戦での現在順位: 15位
勝ち点 14:勝ち4 引き分け4 負け7
得点17 失点25

 シーズン序盤は5位になったりと調子が良かったが、現在の順位は15位である。ここ9試合の成績は1勝2分6負となっており、リーグ戦では7試合勝ちなしのアーセナルと同様、ここにきて失速、Pellegriniの解任を求める声も大きくなっている。ただ、ここ4試合を観てもモウリーニョ初陣のスパーズに善戦、アウェイでチェルシーに勝利したりと上向きの兆しもあるが調子の波が激しいようにみえ、ここ最近ずっと絶不調のアーセナルとは少し境遇が異なる。

premierleague.com

 不調の理由について11月末に書かれたAdam Bateの記事によると、最近の不調の大きな原因の1つはFabianskiの離脱である彼が離脱した後の成績は1勝1分6負であるが、離脱する前の成績は3勝3分1負、開幕戦でマンチェスター・シティに負けたのが唯一の敗戦となっている。下の図の左はFabianskiの代役を務めたRobertoが犯したミス一覧になっており、毎試合の様に致命的なミスをしている。そして下の右の図は昨シーズンのFabianskiのゴール阻止の指数で、プレミアリーグでもトップの数字をたたき出している。リーグ随一のクオリティの選手であるFabianskiが急にミスを連発するRobertoに代わったのだからその落差はとても大きい。ただ、単に代役の力不足に問題を還元できるわけではない。こちらの記事では他にも、ウェストハムが今シーズン全ての試合で走行距離で劣っているというデータも紹介している。元よりウェストハムの守備は不安を抱えており、Fabianskiに過度に依存したものになってしまっていた。そして、後回しにしていた守備面の課題がFabianskiの離脱で一気に露呈、そこにRobertoの質の低さという追い打ちがきた結果、現在の不調に繋がっているのだろう。チェルシー戦からはMartinがGKを務め良いパフォーマンスをみせているが彼も元々第3GKで、クオリティに不安がないわけでない。アーセナルのストライカーにはこの隙をついたゴールを期待したい。

skysports.com
skysports.com

 他に気になるデータとしては下の図のように、前半15分から30分の間の失点数が最も多く、逆に得点数が最も少ないことである。前節のウルブス戦でもこの時間帯に失点している。お互いに出方を伺う時間が過ぎ打開策を探りあう時間帯なのでそこで綻びが出やすいのかもしれないし、もしくは試合開始時の緊張感が緩み集中力にかけやすいのかもしれない。どういう理由にしろ、こういった傾向はあるのでアーセナルとしては上手く利用していきたい。

understat.com

直近四試合のリーグの結果とメンバー


vs Burnley (A) 0-3
(whoscored.com)
vs Tottenham Hotspur (H) 2-3
(whoscored.com)
vs Chelsea (A) 0-1
(whoscored.com)
vs Wolverhampton Wanderers (A) 0-2
(whoscored.com)

 フォーメーションはいずれも4411だがそれはここ4試合のみで、それまでは4141だった。4411にすると4141よりもSHの選手の守備タスクが増える分、トップ下の選手は守備強度もそれほど求められずに自由に動き回り攻撃参加ができるようになる。特にワントップにHallerが使われる場合は、周りを活かすことに強みのある彼の近くに常に誰かがいる必要があり、そうした役回りをトップ下の選手に任せられる様になる。また4141の場合はどうしてもアンカー脇のスペースが気になるが、4411の場合はそういった心配もない。こうした攻守での利点を考えて最近は4411を使っているのであろうが、実は結果が出ているわけではない。4141の時は90分辺りのゴール数が1.22、失点数が1.0であったのに対し、4411になってからは90分辺りのゴール数が0.77、失点数が2.05と悪化している。Antonioが復帰できればチェルシー戦でも勝利した4411を間違いなく使ってくると思うのでここでは4411を予想するが、Antonioが起用できない場合は以前の4141に戻す可能性も十分にある。

understat.com

怪我人等情報


 FabianskiとLanziniは今年中の復帰は無理そうで、Antonioがアーセナル戦に出られるかどうかは直前に判断するようである。Wilshereと Reidが復帰しており、ウルブス戦で負傷交代したSnodgrassについては会見での言及がないのでおそらく出場可能なのだろう。また、累積警告でチェルシー戦が出場停止だったDiopはなぜかウルブス戦でもベンチ入りしていない。一通り調べたが情報が見当たらないので単に戦術的な理由等でメンバー外なのだろう。
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メンバー考察


 フォーメーションを4411と予想した場合、議論の余地があるとすれば、トップ下とSHの選手起用だろう。ここ2試合はFornals、SnodgrassをSHに、トップ下にAndersonを起用しているがこの場合、Yarmolenkoを使うことができない。現在チーム内得点数2位のYarmolenkoを使うことまで考慮に入れると前線の組み合わせは下の様なものが考えられる。

①SH:FornalsとSnodgrass、OMF:Anderson
②SH:FornalsとYarmolenko、OMF:Anderson
③SH:FornalsとSnodgrass、OMF:Yarmolenko

 守備的なバランスを考えつつ最近の傾向を踏襲するなら①だが、この場合、上で述べた様にYarmolenkoを使えないし、またAntonioを起用できない場合に得点への手段が乏しくなる。Antonioを起用できない場合は③にしてYarmolenkoをフィニッシャーにすることも考えられるがピッチのどの位置でボールを受けても仕事をする今の調子のAndersonを外すとは考えにくいし、可能性としては一番低いと思う。②は右SHにYarmolenkoを起用することになるので守備面での不安は大きくなり4411を採用するそもそもの狙いから外れるように一見思えるが、今回は②で来るのではないかと思う。LjungbergはKolasinacを重用しているが、Kolasinacにある程度自由にボールを持たせても彼から前線へ良いパスが供給されることはないし、4バックの時のKolasinacはリスクを恐れてオーバーラップに消極的だ。そう考えると、そもそもアーセナルの左SBへの守備はそれほど重視しなくても良いので、YarmolenkoのSH起用にそれほど躊躇する必要はない。下の図のようにウェストハムの攻撃は左に偏りがちなので、それを是正し右サイドから脅威を与えるためにもYarmolenkoを使いたいのではないかと思う。

whoscored.com

 よって先発予想は下の通り。最近の傾向よりも攻撃的でこれまで一度も先発で試したことのない布陣だが、今シーズンのアーセナルに対しては恐れを抱くことなく戦うチームが多い。またこの形であればCFがAntonioであれHallerであれ攻撃の質はある程度高いものを保てるだろう。ただ上で書いたように、Antonioが間に合わずもしHallerを使う場合は以前の4141に戻す可能性も十分にあると思う。


ウェストハムの戦い方


 まずは守備面から。チェルシー戦のウェストハムの守備時の形は下の左の図の様になっていた(図ではNobleが左、Riceが右になっているが実際は逆です)。442でブロックを敷き、最前線の2人はCBからDMFへのパスコースを遮断中盤の4枚で中央のスペースを埋めつつ、中盤の両サイドの選手はそれぞれ相対するSBの選手が保持した際にプレスをかけにいき、中盤の4人のブロックはそれに呼応してスライドする。そして、攻撃の起点になるJorginhoに対してはAndersonがしつこくマークしていた。チームとしてはブロックを敷くが、Jorginhoに対してはAndersonがパスコースを切り、ブロックを越えられた後もマンマークすることを徹底していた。チェルシー戦のレビュー記事でも詳しく書いている様に、Andersonがよく機能していて、この試合、Jorginhoはほとんど仕事をさせてもらえていない。


 この守備の際には、上の右の図のような形で危ない場面をつくられていた。トランジション時に中盤の4人と前線2人の間に大きなスペースができてしまい、そのスペースで自由にボールを持たれてしまう場面というのはできてしまう。また、コンパクトな幅のブロックをつくり対応するのでサイドにスペースはあるし、ボールの位置でブロックの位置が決まるのでブロック間にいる選手への対応は判断が難しくなる。上の場面でもCreswellは相手SH(Pedro)をマークし中央寄りにいるし、Fornalsはブロックを形成しているので、大外かつ中盤のブロックを少し越えた位置のJamesは非常に掴まえづらい。ただ、ピンチにはなっているもののこの日のチェルシーにはターゲットとなれるAbrahamが不在で、そのため決定的なピンチではないし、ウェストハムとしてはある程度こういう場面がつくられることは仕方ないと割り切っていたと思う。

 下の左の図の場面はウルブス戦での守備対応の場面(前半21分)。4バックのチェルシー戦と同様の442のブロックを3バックのウルブスにも採用していたのだが、所々で3バックへの対応が未整備なシーンがみられた。最も不明確だったのが、大きくワイドに広がったサイドのCBに対して誰がプレスを掛けるかということで、CFのHallerなのか、SHのSnodgrassなのか定まっておらず、下の場面では中途半端な対応になってしまっている。相手のCB+WB+WGの3人に対してSnodgrass、Fredericksの2人で対応しなければいない状況は避けたいが、HallerがCBへのプレスに参加してしまうとCMFへのパスコースを遮断できなくなりNobleがCMFを注視せざるを得ない。この場面ではCFがNobleとSnodgrassの間に下りてくることで、CMFに気をとられているNobleの空けたスペースを上手く利用できている。Snodgrassが釣りだされたためにFrederickはWBとWGへのどちらに対応をするか難しい判断を迫られどっちつかずのポジションに、結果的にBalbuenaとFredericksの間のスペースでWGがボールを受けることを許してしまっている。


 上の右の場面は86分の失点シーンで、この場面でもYarmelenkoとRiceの2人がボール保持者に気をとられ相手WBの選手がフリーになり数的不利をつくられている。トランジション時の場面でFredericksがオーバーラップしているので厳密には上の左の図と同じ問題を示しているとは言えないのだが、中盤と守備陣のブロック間で待ち構えるWBへの意識が薄くなりやすくサイドで数的不利をつくられやすいことと、SHとDMFの選手が同じ選手に釣られることがあり、ここの守備時の連携があまりとれていないことは指摘できる。

 次は攻撃面についてであるが、ウェストハムの攻撃時の特徴はワイドさを活かした攻撃である。下の場面はそれぞれ左がボーンマス戦での場面、右がチェルシー戦での場面である。左の図では白色のチームがウェストハムである。どちらも、右から左への素早い展開からSBのCresswellがゴールを決めている。Creswellはオーバーラップのタイミングも絶妙かつスピード感もあるし、ボールを持つと正確なシュートを打つこともできる(これまでのゴール数3はチーム内で2位)。ボーンマス戦では他にも左から右サイドへのサイドチェンジで得点を決めているので、必ずしも右から左への展開ばかりではない。

 サイドの幅を活かした攻撃に加え、マンチェスター・ユナイテッド戦では下の様な中央からの崩しでも点を決めている。上の様なワイドの幅を活かした攻撃にしろ、下の様な中央からの崩しにしろAndersonが攻撃の中心にはなっていて、彼が中央で受けて左右に展開、もしくはサイドで受けて逆サイドへ展開等、Andersonがピッチ上の様々な位置で自由に受け攻撃を形作っていく。彼にボールを渡すために重要な役割を果たしているのがCFの選手で、Antonio、Hallerとポストプレーに長けた選手に後方からボールを当てて、Andersonがボールを拾っていく様な攻撃が主になる。以前4141を採用していた際はAndersonをSHで起用していたのだがその場合、どうしても守備的な役割が彼の自由さを縛ることになる。現在の様に4411のトップ下でAndersonを起用すると、彼の守備的な負担も軽減できるし、攻撃時の強みも発揮しやすくなる。このほかに、SH、SB、DMFの3人が絡むことでサイドから崩していく様な場面もみられる(ウルブス戦の13分や31分など)。


アーセナルはどう戦うべきか


 今節のメンバー選びで注意すべき点は下の通り。

442のブロック間でボールを受けかつ仕事を果たせるサイドの選手の起用
・コンパクトな幅のブロックを敷かれるのでクロスをあげる機会は多くなる
Andersonに中央で自由にさせないための工夫
・Frederickのオーバーラップに対しての守備対応

 上の点を考えた上で選んだメンバーは下の通り。ウルブスと同じ343にしており、守備時の形もウルブスとほとんど同じである。下の図の右の様に、ボール非保持時はOzilとMartinelliがツーボランチへのコースを切りつつ相手SBへ対応。中央はGuendouzi、Torreiraを余らせる形にし、OzilやMartinelliの対応が不十分な場合でもどちらかが出ていける態勢をつくっておく。中央のスペースは中盤の2枚で埋めるが、Andersonがサイドに流れてきた場合等はCBが積極的にでていく様にする。攻撃に関して言うと、基本的には左サイドでつくっていくことを目指し、Ozil+Tiernery+Holdingの3人で数的優位を作り出すというウェストハムの3バックへの対応のまずさを利用する。右サイドにMartinelliを置くことでTierneyのクロスが最大限活かしたい。Guendouziを採用したのは、押し込む展開になった時に相手のブロックの陣形を崩すためにボールを前進させられる存在が必要になってくるからで、Xhakaを使ってもチェルシー戦のJorginhoのようにほとんど仕事はさせてもらえないと思う。

 アーセナルの公式アナウンスによるとHoldingが出られるかはわからず、その時は3バックは断念せざるを得ない。その場合は下の様な形をみてみたい。この場合はTorreiraを守備時には余らせるようにして、CMFの2人で相手のツーボランチに対応する。この形を採用する魅力は中盤に3人を起用できることで、ウェストハムの中盤にコンパクトさが欠けてきたような場合には中央からの崩しも選択肢に入れることができる。4バックへの対応はチェルシー戦でよく機能しておりウェストハムとしても対応しやすいのではないかという懸念があるが、チェルシーはツーボランチだった。ウェストハムがスリーセンターに対して明確な回答を持っているのかはわからないので、試してみても面白そうだとは思う。


 Ljungbergはアーセナルの後に約1年間、ウェストハムに在籍している。約1年間だけとはいえ、Ljungbergがイングランドで在籍していたのはアーセナルとウェストハムの2チームのみなので、彼にとっても感慨深いものがあるのではないかと思う。暫定監督期間の短い期間にこういう試合がめぐってくるのだから運命とは面白い。
'He'd wear these big hats to training. He definitely had an...